アレルギー、ワクチンのシンポジウムにて(4:今後の小児喘息の、より良い長期の治療とその評価について) |
先月のシンポジウムでの4番目のお話は、イギリスのアバダーン大学呼吸器部門の教授の David Price先生による、喘息の長期にわたるお薬の新しいお話と将来への展望です。
イギリスで行われた最近の喘息の調査によりますと、喘息の患者さんの約3割以上の方で喘息の症状が時々強く出ており、呼吸困難が起こって救急外来を受診したり入院を要することがあるなどの結果が出ています。
これが意味することは、多くの方で喘息と診断され治療をされながらも、残念ながら思ったほどの効果が上げられずに、コントロールの状態が悪いとのことです。
イギリスでは医療事情が日本と違い、簡単には医療危難を受診することは出来ず、そのため急な発作などでの対処はもとより、日本では当たり前に行われている継続的な(定期的な)診療と治療を受ける機会が少ない方も稀ではありません。
そのような環境が喘息の患者さんやお子さんのコントロール状態を悪くさせている要因ですが、実はしっかりと治療を受けていると思われる患者さんでも、定期的な治療を受けられていない方と同じようにコントロールが悪いことも多く、
その様なときにはただ単に薬を増やすことではなく、患者さんがしっかりと環境整備(喫煙やホコリの回避)、
服薬指導(飲み薬は飲み忘れ以外はあまり問題はないのですが、吸入薬は上手に薬を吸えているかどうかで治療効果に差が出ているようです)が出来ているかを今一度見直してみる必要がある事を強調されていました。
一般的な色々な研究調査からの報告では、しっかりと薬を服用しかつ、しっかりと環境整備ができている方は全体の1割以下くらいで、ほとんどの患者さんでは期待されるほどのしっかりした治療が出来ないでいるとのことです。
お子さんの喘息の適切な治療を決める際にはこれらのことを考えに入れながら進めてゆく必要があります。
厳しい条件(しっかりと薬を飲み、ダニやたばこなどの環境整備もしっかりとやり、定期的に病院を受診していくという)での薬の効果の比較は、多くの患者さん(イギリスの例でいえば9割近くの患者さん)にとってはあまり有効な役に立つ方法とは言えません。
そこでなかなか定期的に薬を飲んでいなかったりクリニックを受診できていないような多くの患者さんを対象にした研究報告も、
実際に患者さんを目の前にして治療を行っているような我々第一線の小児科医(勤務医も開業医も含めて)にとっては重要な情報になってきますし、最近はそのような報告も多くなってきています。
そのうちの一つの研究結果では、子どもさんの喘息を良好な状態に維持してゆく長期的な治療のお薬として、吸入のお薬と一日一回か二回の飲み薬のどちらがよいかという報告が目立っていました。
これからの子どもさんの喘息が長期的にどのように良くなってゆくかを知る上でも色々な役に立つ情報が期待されますね。
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