第22回日本外来小児科学会にて(その6):同時接種とワクチン・リスク・コミュニケーション |
前回に引き続いて、ワクチンの同事接種についての講演からです。
海外でのワクチンの同時接種は、1980年には既にアメリカでMMR(はしか、風疹、おたふくかぜ)や、三種混合(百日咳、ジフテリア、破傷風)や不活化ポリオワクチンの同時接種が行われていました。1986年にはアメリカではしかの大流行があり、そのうちの4割弱くらいの子さんではしかのワクチンが未接種のため、同時接種をしていなかった医師の責任が問われる事態となりました。海外の先進国では1980年代から1990年代にかけてワクチンの同時接種に関しての研究がいくつも発表されましたが、どれも同時接種で重い副作用の発生は増加しないという報告ばかりでした。
日本では昨年の3月に同時接種後の死亡例の報道が有り、多くの皆さんに不安を与える結果となりましたが、一時的な中止後にすぐに同時種が再開となり、その後のワクチン接種の数も報道前よりも数多く接種されていますが、接種後の死亡例が増加したという報告も報道も現在のところ有りません。もともとワクチンの同時接種以前の古くから乳幼児突然死症候群という原因不明で小さな赤ちゃんが亡くなる病気が知られていますが、ワクチン同時接種後に亡くなられたお子さんの多くの方はこの病気であった可能性が高そうです。
鹿児島県で行われた3年間にわたるワクチンの安全性の調査でも、ワクチンの同時接種と単独接種を比較してみても副作用の頻度には差がなかったという結果が出ています。
以上のことから、世界的に見ても日本のこれまでの報告を見ましても、ワクチンの同時接種によって引き起こされる重大な問題はないことが分かりましたので、お子さんにとって必要なワクチンを必要な時期に接種するためには、同時接種を前提としてお子さんのワクチンスケジュールを組み立ててもらって下さい。
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