前回と同じくシンポジウム9より、2番目の演題は、札幌医科大学内科の喘息の専門の先生が、
「気管支喘息における末梢気道病変の病態と治療」と題した、成人における喘息についての講演でした。ただし成人の喘息のお話ですが、その
成人喘息の原因はほとんどが小児喘息です。ですから小児喘息の治りが悪く、成人喘息に移行するお話とも言えます。
「末梢気道」とは肺の隅々にわたる細かい空気の通り道のことで、呼吸によって酸素を取り込んだりするのはこの部分がメインになってきます。
そのため、
この部分が喘息などで障害を受けると、呼吸が苦しくなるわけです。しかもこれよりノドに近いもっと太い部分が正常でも、この部分に異常がある場合には、なんと通常の聴診や診察では分からないことが多いそうです。この部分の異常を見分けるためには、精密な呼吸機能検査や息を吐き出した時の胸のCT検査などが必要で、その診断がなかなか難しいとの事でした。
そのため、一見して治ったかに見える喘息であっても(通常はこのパターンの方が多いのですが)、鼻風邪や鼻アレルギー、軽い咳だけの風邪などでも、それまで全然大丈夫で、本人自身も喘息など忘れてしまっているような状態でも、喘息の症状が再発しやすいのだそうです。また、風邪もひいてない健康な状態でも、激しい運動などをすると息切れがするのもこの状態(末梢気道が正常ではなく、やや狭くなっていたり、一部潰れて機能していない状態)が考えられるとのことでした。
これらのことから言えるのは、
小児の時に治ってしまった喘息でも、この末梢気道に異常が残っているような状態では、いわゆる喘息発作の火種が残っているような状態ですので、思春期や成人になってまた喘息が再発しやすいとのことでした。
このようなことから
、成人の喘息のほとんどは、末梢気道が治っていない、一見治ってしまったかに見える小児喘息からの持ち上がりが考えられます。そのため、成人も含めた喘息治療は、いかに小児の時期の治療により、このような末梢の気道まで正常化させることが出来るかどうかと言えそうです。