アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、長期にわたって、かゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりして、慢性の経過をたどる湿疹の一種で、多くの方にアトピー素因が認められます。

では、アトピー素因は何かといいますと、「アトピー」とは一つの体質を表す言葉で、アレルギー反応を起こしやすい体質をアトピー体質と言うことができます。すなわちアトピー体質とはアレルギー体質とほぼ同等の言葉と考えてもよろしいかと思います。

アトピー性皮膚炎の診断

アトピー性皮膚炎の診断には、以下の3つの項目を満たすことが出来ればアトピー性皮膚炎と診断することが出来ます。その3つの項目とは、下記3項目です。

1.かゆみを伴うこと。
2.皮膚の症状は湿疹であり、その分布が左右対称的など、特徴があること。
3.慢性の経過をたどります。慢性とは2歳未満では2か月以上、2歳以上では3か月以上の経過をたどること。

なお、似たような病気でアトピー性皮膚炎と紛らわしい病気もありますので、以下の病気が含まれていないかどうかを確認することが必要になってきます。

*その鑑別しなければならない病気とは、

  • ・接触性皮膚炎(かぶれ)
  • ・脂漏性
  • ・湿疹
  • ・単純性痒疹
  • ・疥癬
  • ・汗疹
  • ・魚鱗癬
  • ・皮脂欠乏性湿疹
  • ・手湿疹
などです。

アトピー性皮膚炎の重症度

一口にアトピー性皮膚炎といっても、その重症度にはかなりの差があります。同じアトピ一性皮膚炎でも、重症度が違いますと、使用する薬物などもかなり違ってきますので、専門医などでしっかりと重症度を把握してもらうことが必要です。

*軽症:面積にかかわらず、軽い湿疹のみ
*中等症:強い炎症を伴う湿疹(掻き傷、びらん、苔癬化)が、体表面積の10%未満
*重症:強い炎症を伴う湿疹が、体表面積の10%以上~30%未満
*最重症:強い炎症を伴う湿疹が、体表面積の30%以上

※この重症度によって、治療の期間や、治療薬、原因の検索や除去が変わってきます。

アトピー性皮膚炎の治療

【原因や悪化因子の検索と除去】

アレルギー疾患の第一の治療は、何をさておいても原因の除去が大事です。原因となる食物や、ダニ・ホコリ、環境因子(有機溶剤など)などの除去。発汗や皮膚に擦れやすい衣類、皮膚の乾燥などへの対処が必要になってきます。

乳児の早期のお子様では、食物が原因のこと(卵、牛乳など)も少なからずありますので、その対処として原因となる食物の摂取をいかにするかが問題になってきますが、最近の研究では、原因となる食物の過度の制限は、アトピー性皮膚炎の治療には却ってよくないとの報告も出てきていますので、食事制限などを行う場合には必ず主治医の指示のもとに行うことが必要です。

【スキンケア】

まず、皮膚を清潔にすることが第一です。
刺激の少ない石鹸を使用して、汗やホコリ、ゴミ、刺激物質、黄色ブドウ球菌などを洗い流すために、毎日の入浴は欠かせません。
発熱などで入浴ができないときは、シャワーでも宜しいです。また学童期のお子様では、スポーツなどで汗が大量に出た時も、直ぐにシャワーが使える環境が望ましいですね。

次いで、皮膚の保湿・保護のために、入浴後なるべく早くに、保湿剤(ヒルドイド、パスタロン、ケラチナミンなど)や保護剤(白色ワセリン、プロペト(精製ワセリン)、サトウザルベ、アズノールなど)を湿疹の場所だけではなく全身にくまなく塗ります。この時には少量ではなく、やや多めかなと思うくらいにたくさん塗るとよいでしょう。

【薬物療法】

最も多く使用されるのは、湿疹・皮膚炎は皮膚の炎症ですので、その炎症を治す薬が使用されます。一般的にはステロイド剤の塗り薬が用いられます。

ただしステロイドの外用剤は、その強さにより何十種類とありますので、湿疹の部位や重症度、年齢によりステロイドの強弱の外用剤を塗り分けるのがコツになります。

ステロイドのお薬も正しく適切に使用すれば、ほとんど副作用は認められませんし、しっかりと皮膚の炎症を抑えますので、とても大切なお薬ですが、主治医の指示通りに使用しないで、自己の判断で勝手に使用したり中止したりしますと、副作用の危険が増したり、なかなかアトピー性皮膚炎が改善しない要因になりますので、正しく主治医の指示通りに使用しましょう。

また、年齢や部位により、プロトピックという免疫抑制剤を用いることもあります。このお薬の特徴は、ステロイドのお薬と違って、正常の皮膚からは吸収されないので、塗り続けていてもほとんど副作用が出ないことと、そのおかげで顔面や首の湿疹にも使用しやすいことです。

時にかゆみが強いときには、このかゆみを抑えない限り、小さなお子様では掻くたびに、せっかく良くなってきた湿疹もすぐに悪化してしまいますので、かゆみ止めのお薬を飲んでもらうこともあります。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬がこのような場合に用いられます。

最近は抗ヒスタミン薬と痙攣の関連が取り上げられていますので、抗ヒスタミン薬はあまり用いられなくなってきています。