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アトピー性皮膚炎 Archive

アレルギー、ワクチンのシンポジウムにて(1:アトピー性皮膚炎の新しいお話)


 先月末に東京での「小児のアレルギーとワクチンについてのシンポジウム」に参加してきました。今回から数回に分けて、子どもさんのアレルギーとワクチンについての新しい話題を提供させていたします。

最初は千葉大学小児科教授の河野先生によるアトピー性皮膚炎についての新しいお話です。

まずアトピー性皮膚炎の病気がどのように変化してゆくかについてですが、河野先生方が行った千葉県での子どもさんでの調査では、3歳までに発症するアトピー性皮膚炎は、1歳6か月までに発症する「早期発症群」と、1歳6か月以降に発症する「後期発症群」の2つに大きく分けられるそうです。その経過では個人の遺伝や体質などの影響と、ほこりやダニなどの居住環境による影響が複雑に絡み合って症状に様々な程度の変化が出てくるようです。

 その中でも大きく取り上げられていましたのは「早期発症群」では"食物アレルギー"の合併が特徴的なことです。この食物アレルギーが合併することにより、アトピー性皮膚炎が治りづらくなったり、その後に小児喘息が発症してくる可能性が高くなるようです。

 食物アレルギーはこの時の調査では、1歳児の約30%のお子さんが何らかの食物に感作(アレルギー検査で反応がある・・・ただしこのことですぐにアレルギーが起こるというわけではありません!)されているようです。このアレルギー検査ではアトピー性皮膚炎のあるお子さんの方が、普通のお子さんに比べて食物に感作される頻度が高いこと、また6か月以前から湿疹があるお子さんではその後のアトピー性皮膚炎や食物への感作が多いことも知られてきました。

 最近では食物アレルゲンは皮膚から(特に口の周りの皮膚から)入る食べ物や母乳の成分がアレルギーを引き起こす(食物アレルゲンの経皮感作といわれています)との報告が多くみられますので、赤ちゃんの早い時期から口の周りの湿疹やほっぺたや顔の湿疹が続かないように、しっかりとスキンケアをして皮膚のバリア機能を保たせるようにしてあげてください。


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アトピー性皮膚炎とアレルギー性結膜炎の講演会にて


 6月30日の講演会の最後の3番目の話題は、「ゴールを目指したアトピー性皮膚炎の治療」という題で、京都府立医科大学の皮膚科の教授のお話でした。

お話の要点は、"アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の治りづらい病気ですが、適切な治療法で症状をコントロールしてゆくと治ることが期待できる病気"ということです。

そのコントロールするという中で強調されていたのは、

1)症状が再び悪化した時の治療の再開が遅すぎること。

2)再び治療を開始しても、早めに薬を止めたいために治療を中断する時期が早すぎる。 

3)症状がかなり悪化するまでは受診しないために、それからの治療が難渋する。 ということでした。


では、アトピー性皮膚炎は一体どのくらいの割合で治るのでしょうか?
 

今回のお話では、ドイツからの報告として、1歳の時でのアトピー性皮膚炎の有病率は13%程度2歳の時のアトピー性皮膚炎の有病率は21%ですが、これらの患者さんに適切な治療をすることにより、3歳の時点ではこのうちの約4割近い方が治り、7歳では約8割以上の方でアトピー性皮膚炎が治るとのことです。

治りにくい要因としては、2歳の時のアトピー性皮膚炎の状態が重症であったこと。

家族の方にアトピー体質の方がいらっしゃること。

本人に強い食物アレルギーがあること。

などが挙げられるようです。

また、日本では三重県のデーターを示され、6歳の時点でもまだアトピー性皮膚炎が残っている方でも、しっかりと治療をすれば中学生になる頃には三分の二以上のお子さんでアトピー性皮膚炎が治るそうです。

長く続いてなかなか治らないからといって治療を止めずに、しっかりと治療することによって、アトピー性皮膚炎の状態はかなり改善するようです。
 ただし治療を継続するときに注意しなければならないことは、
1) 再び皮膚の症状が悪化した時には早めに治療を開始すること(ヨーロッパのデーターでは、悪化してから受診するまでに一週間以上受診しないで様子を見ている期間があり、このことが湿疹を治りにくくしているようです。)
2) 治療を一旦開始しても、しっかりと良くならないうちに治療をやめてしまう傾向があるので、湿疹が治ったように見えても、肌がしっかりと"触ってつるつる"になるまで薬で治療し、中途半端な治療状態でやめないこと。

以上のことに気を付けてしっかりと治療すれば、アトピー性皮膚炎のゴールが見えてくる! と話されていました。

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アトピー性皮膚炎とアレルギー性結膜炎の講演会にて

 6月30日の講演会の2番目の話題は、「アトピー性皮膚炎の新しい話題と皮膚のライブイメージング」という題で、京都大学皮膚科の准教授のお話でした。

アトピー性皮膚炎の発症する機序について、1)皮膚バリアの機能異常であること、2)患者の方に免疫的・アレルギー学的な異常があること、3)かゆみの異常が強いこと、の3つの大きな要素について話していただきました。

皮膚バリアの機能異常免疫学的な異常については、最近の研究では「フィラグリン遺伝子の異常」が大きく取り上げられているようでした。

この遺伝子の異常が一部の方に認められ、この異常により患者さんの皮膚のバリア機能に異常をきたし、カサカサの肌になり、皮膚の保水性(水分やうるおいを保つ能力)が落ちて、その結果かゆみも強くなってきて、湿疹の変化が起こり、アトピー性皮膚炎の状態になってくるということのようです。

この遺伝子の異常はアトピー性皮膚炎のみならず、気管支喘息や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などの発症にも関与するそうです。

また皮膚のかゆみが強く、その結果何回も何回も掻き壊してしまうと、皮膚の細胞からアトピー性皮膚炎になりやすい物質TSLPTARC/CCL17などと呼ばれているものです)が多く産生され、さらにそれがアトピー性皮膚炎を悪化させるということも分かってきたようです。

まとめますと、アトピー性皮膚炎は皮膚のバリアの機能異常によって起こる病気で、それがかゆみなどの症状で皮膚を強く掻き壊して、さらに皮膚のバリアの機能異常を増悪させる悪循環が、なかなかアトピー性皮膚炎が治らない要因といえそうです。

アトピー性皮膚炎を治すには、皮膚のケアとかゆみのケアがまず第一と言えるでしょう。


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アトピー性皮膚炎とアレルギー性結膜炎の講演会にて・・・そして平原綾香に「ドキッ!」

先週の土曜日(6月30日)に東京でアトピー性皮膚炎とアレルギー性結膜炎の講演会(かゆみ治療のアップ・トゥ・デート2012)に参加してきました。

主な話は、かゆみの強いアトピー性皮膚炎とアレルギー性結膜炎のお話とその治療についてです。

一番目のお話は、「アトピー性皮膚炎に合併するアレルギー性結膜疾患」という題で、東京女子医科大学の眼科の教授のお話でした。アトピー性皮膚炎の患者さんでは顔のかゆみが強いと、何回も顔や目の周りをこすったり叩いたりするので、眼瞼(まぶた)や結膜(しろ目)、角膜(くろ目)が傷つき、これらの炎症が起こったり、ひどい時には白内障や網膜の剥離も起こすことが有ります。

これらの病気はアトピー性皮膚炎の治療で使われるステロイドの塗り薬の副作用ではなく、皮膚が痒くて繰り返し顔をこするためで、薬を勝手に止めないでしっかりと皮膚の治療をすることが大事ということです。また重症で網膜剥離などで手術をした場合でも、皮膚のかゆみが強ければ手術後もまた目をこすったり叩いたりするので、再発のリスクが高いとのことです。

症状は主に目のかゆみや目の痛み、視力障害などです。アトピー性皮膚炎のお子さんにこれらの症状が出てくるときには注意してみてあげる必要があります。

これとは別に、アトピー性皮膚炎が合併していないお子さんにもアレルギー性結膜炎が発症することがあります。アトピー性角結膜炎や春季カタルという病気です。これらの治療には主に点眼薬が用いられます。使用する点眼薬は、かゆみを抑えるために抗アレルギー薬の点眼薬が多く使用されます。最近では涙と同じ浸透圧のしみない目薬も発売されていますので、受診の際によく相談されてみてください。また毎年同じ時期に発症するときには、その時期の1~2週間前から治療を開始すると効果も高いそうです。

他に、皮膚科の先生によるアトピー性皮膚炎のお話がありましたので、次回にご紹介しましょう。

 

翌日の日曜日には、帰る途中に札幌に寄り、ニトリ文化ホールで公演されました、平原綾香のコンサートツアー2012~ドキッ!~を観てきました。

開始早々の赤いドレス、可愛かったですね。途中からは観客もノリノリになり、10代から80代(?)の全員が、総立ちでしたねェ(n'∀')η。

今回のコンセプトは"スマイル スマイル"。笑顔で人を暖かくすると共に、どんな辛い時でも笑顔で前をむいて歩けばきっといいことがある!!

みんなも笑顔でガンバリましょうね!

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