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学会の報告 Archive

小児科学会の北海道地方会にて(2):溶連菌、失神、誤飲(薬物誤飲)など

 A群溶連菌感染症(溶連菌感染症)では、発熱のどの痛み発疹以外にも腎炎心臓弁膜症など多くの症状が合併しますが、多動や、神経・精神障害などの症状が出てくることもあります。


今回は4歳のお子さんが、多動チックにおいに過敏になったり戸締りを異常に気にしたりなどの精神症状が強く出て査の結果この病気によるものとわかり治療されて良くなっています。


今回は溶連菌感染症としては稀なケースでしたが、この感染症で色々な症状が出現する事を改めて認識させられました。

次の失神についての発表は、それまではてんかんの一種と思われていた病気が、実は検査の結果、自律神経の異常で10秒近くの心停止が見つかり


それまで時々失神で倒れたりけいれんを起こしていた原因が見つかった12歳のお子さんのお話でした。

急に倒れたりすることは低血圧や予防接種などでも起こりますが時には重症のこともある例でした。


誤飲のお話は、6歳のお子さんが突然に歩けなくなり、意識障害も出てきたため入院して検査をしたところ、他の色々な検査では分からず脳波検査で薬物の誤飲(この時は家族の方の精神病のお薬でした)が判明し、治療の結果改善した例でした。

お子さんでは考えられないような誤飲がお薬にしろたばこや身の回りの日用品にしろ起こりえますので、気を付けなければならないですね。

 

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小児科学会の北海道地方会にて(1):小児喘息、胃腸炎(ロタウイルス、ノロウイルスなど)についての演題


昨日、札幌で小児科医の学会が開催されました。日本小児科学会北海道地方会という、全道の小児科医が集まった学会です。小児喘息や胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス)、溶連菌感染症、湿疹、薬物誤飲などの演題が発表されていました。

小児喘息の演題は、ステロイド薬の吸入のお薬についてのお話でした。子どもさんで使用できるステロイド剤の吸入の薬は何種類かありますが、今回は1日2回使用のお薬から別の1日1回の使用のお薬に切り替えた結果でした。検査所見ではやや違いがあるものの、効果のほどは同じような結果だということでした。

ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎の演題は、胃腸炎のときに起こるけいれん発作や脳炎・脳症についてのお話でした。発表された札幌の病院に入院した胃腸炎のお子さんで一番多かったのはロタウイルス胃腸炎で、全体の約半分近くを占めていました。二番目に多かった胃腸炎はノロウイルス胃腸炎約10%近いお子さんでした。胃腸炎で入院されたお子さんの3人に2人はこの2つのウイルス性胃腸炎でした。そしてあまり保護者の方には知られてはいませんが、胃腸炎でけいれんや意識がおかしくなることはそれほど稀ではなく、今回の演題でも入院した20人に1人以上のお子さんで、このような症状があり、治療が必要だったということでした。胃腸炎の時には脱水症状だけではなく、けいれんなどの症状にも気を付けなければならないですね。


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小児科学会北海道地方会にて(4:子どもの外傷について)

小児科の学会からの最後のお話は、子どもさんの外傷についてです。


子どもさんでも大人でも、外傷は日常の外来診療や救急外来でも多いのですが、

大人と違って子どもさんで気をつけることはより小さなお子さんでは怪我外傷・事故による症状訴え的確にできないことです。


そのため、最初の診察では軽いと思われた外傷でも症状の進み方がはっきりしないために、思わぬ事態に進むことも稀ならずあります。

 

今回の学会での発表では、お子さんの腹部の打撲から、急激に腹痛を訴えて膵炎になり、入院後に集中治療が必要になったお子さんのケースでした。

このお子さんの腹部の打撲は自転車に乗っていて、転んでハンドルがおなかに当たったという状況のようでした。

そんなことで! と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外とこのような飛び出た器物(ハンドルや棒など)でのおなかの打撲で肝臓や膵臓に障害を起こして出血し、緊急の処置が必要になるという事態は、外傷や救急医療の現場では頭に入れておかなければならないことと言われています。


 小児では、事故や外傷などでは訴えがあまりなく、状況も不明なことも多いため、小さな症状にも気をつけて経過を見てあげることが必要ですね。

 

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日本小児科学会北海道地方会にて(3:小児のヘリコバクター・ピロリ菌の感染について)

今回は小児科の学会から、ヘリコバクター・ピロリ菌についてのお話です。この菌は成人では胃潰瘍胃炎などの原因の菌として有名ですが、

小児でも最近はこの菌の感染症による胃腸炎症状や胃潰瘍の病気が報告されてきています。


今回の学会での最初の報告では2名のお子さんが、腹痛嘔吐の症状が出現し、症状がひどいために入院をして胃や食道の内視鏡の検査をしたところ、明らかな潰瘍が認められて、そこからヘリコバクター・ピロリ菌検出されたそうです。

子のお子さん方は、ピロリ菌の感染は初めての方で、初めての感染でこのような強い症状が出てくるお子さんは珍しいとのことでした。

成人の方と同じように抗生物質などの治療で治ったとのことでした。

 

もう一つの報告では、小学生のお子さん重症の鉄欠乏性貧血を繰り返すために、内視鏡の検査をしたところ、十二指腸潰瘍が見つかり、便の検査でもヘリコバクター・ピロリ菌が陽性のため、診断が確定したとのことです。

このお子さんは通常の便の潜血(胃腸での出血の有無を調べる検査)では正常でしたので、なかなか診断が難しかったようです。


 発表した方のお話では、意外とお子さんでもこのピロリ菌の感染とそれによる症状を現すお子さんは多いとのことでした。気をつけなければならないですね。


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アレルギー、ワクチンのシンポジウムにて(4:今後の小児喘息の、より良い長期の治療とその評価について)


 先月のシンポジウムでの4番目のお話は、イギリスのアバダーン大学呼吸器部門の教授の David Price先生による、喘息の長期にわたるお薬の新しいお話と将来への展望です。


 イギリスで行われた最近の喘息の調査によりますと、喘息の患者さんの約3割以上の方で喘息の症状が時々強く出ており呼吸困難が起こって救急外来を受診したり入院を要することがあるなどの結果が出ています。

これが意味することは、多くの方で喘息と診断され治療をされながらも、残念ながら思ったほどの効果が上げられずに、コントロールの状態が悪いとのことです。
 

イギリスでは医療事情が日本と違い、簡単には医療危難を受診することは出来ず、そのため急な発作などでの対処はもとより、日本では当たり前に行われている継続的な(定期的な)診療と治療を受ける機会が少ない方も稀ではありません。

そのような環境が喘息の患者さんやお子さんのコントロール状態を悪くさせている要因ですが、実はしっかりと治療を受けていると思われる患者さんでも、定期的な治療を受けられていない方と同じようにコントロールが悪いことも多く

その様なときにはただ単に薬を増やすことではなく、患者さんがしっかりと環境整備喫煙やホコリの回避)

服薬指導(飲み薬は飲み忘れ以外はあまり問題はないのですが、吸入薬は上手に薬を吸えているかどうかで治療効果に差が出ているようです)が出来ているかを今一度見直してみる必要がある事を強調されていました。


一般的な色々な研究調査からの報告では、しっかりと薬を服用しかつ、しっかりと環境整備ができている方は全体の1割以下くらいで、ほとんどの患者さんでは期待されるほどのしっかりした治療が出来ないでいるとのことです。


 お子さんの喘息の適切な治療を決める際にはこれらのことを考えに入れながら進めてゆく必要があります。

厳しい条件(しっかりと薬を飲み、ダニやたばこなどの環境整備もしっかりとやり、定期的に病院を受診していくという)での薬の効果の比較は、多くの患者さん(イギリスの例でいえば9割近くの患者さん)にとってはあまり有効な役に立つ方法とは言えません。

そこでなかなか定期的に薬を飲んでいなかったりクリニックを受診できていないような多くの患者さんを対象にした研究報告も、

実際に患者さんを目の前にして治療を行っているような我々第一線の小児科医(勤務医も開業医も含めて)にとっては重要な情報になってきますし、最近はそのような報告も多くなってきています。


 そのうちの一つの研究結果では、子どもさんの喘息を良好な状態に維持してゆく長期的な治療のお薬として、吸入のお薬と一日一回か二回の飲み薬のどちらがよいかという報告が目立っていました。

これからの子どもさんの喘息が長期的にどのように良くなってゆくかを知る上でも色々な役に立つ情報が期待されますね。


 

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アレルギー、ワクチンのシンポジウムにて(3:子どものワクチンの up to date )

 先月の東京でのシンポジウムの3番目のお話は、国立病院機構福岡病院部長の岡田先生による、ワクチンの最近の話題についてです。


 この中で先生は、ワクチンの副反応の中でも最近の子宮頸がんワクチンの接種後に問題になりました失神について、多くのデーターを基に説明されていました。

子宮頸がんワクチン接種後に、その痛みなどで接種後短時間に気持ちが悪くなって倒れこんだり、意識を失うお子さんが新聞などで報道されていましたが、

実はこの症状は子宮頸がんワクチンが開始される前にもいくつか報告されている副反応だったとのことです。


子宮頸がんワクチン他のワクチンと接種の仕方がやや違い

最初から筋肉注射で接種するようになっていましたので、他の皮下注射のワクチンよりも接種時の注射の痛みが強くなることが多いものです。


そのためその痛みの反射により血圧が下がり倒れこんだりすることがあります


しかしながらこの副反応は海外での調査でも同様に起こっており、その頻度もほぼ日本と同じであることから、特別わが国だけの問題ではないようです。

接種前にはあまり緊張させずに(友達の話などで非常に痛いワクチンだとの先入観で接種しようとするケースも多いようですが・・・)、

接種時にも緊張を解きほぐすような会話をしたり、

接種後すぐには立ち上がったり急いで動くなどの動作を控えるようにしてあげてください。

 


また、最近ではワクチンの種類も多くなり、複数回接種するワクチンがほとんどのため、最近の日本のお子さんのワクチンの接種回数は飛躍的に多くなってきました

そのため問題になるワクチンの副反応としてあげられる中に、アナフィラキシーと言うものがあります。

このアナフィラキシーというのは複数の臓器の症状が起こることを指しています(例えば接種直後の蕁麻疹と呼吸困難とか、失神と蕁麻疹とかなどです)。

このアナフィラキシーの報告は、新型インフルエンザワクチンの接種などで多く報告されていますが、他のどのワクチンでも起こりえます

そのため、ワクチン接種後は20分前後は何か変わったことが起きていないかどうかを観察し、症状が起こった際にはすぐに診察と処置ができるように、接種場所の近くで待機されることが必要ですね。


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第22回日本外来小児科学会にて(その7):同時接種とワクチン・リスク・コミュ二ケーション

今までにブログで触れさせていただいたのは、ワクチン・リスク・コミュニケーションという演題の中でのお話でしたが、このワクチン・リスク・コミュニケーションとは何かといいますと、

被接種者(お子さん)保護者医療従事者、行政、マスコミ、専門家などが、ワクチンの利点と副作用などのリスクについて、またワクチンで防げる病気のリスクについて、お互いに正確な情報を認識し合うということですね。


 どんな予防接種も全く安全な予防接種は有りません

きわめてまれに重い副作用が生ずることがありえます

そのため健康被害の正確なモニタリングや副反応のより少ないワクチンの開発が求められます

しかしながらワクチンの副作用に対する過度な報道(例えば昨年の同時接種後の死亡例の報道など)がありますと、その死亡がワクチンの原因ではない死亡(他の病気や乳幼児の突然死など)であっても、ワクチンに対する不適当な恐怖が市民のあいだに広がり、その結果ワクチンの接種を避ける状態が続きますと、

今度はワクチンで防げる病気が蔓延し、その病気による死亡が増えてしまうという状況が起こります。

 

1999年に行われたアメリカでの全国調査でも、ワクチンは病気の予防に極めて重要であると答えた方は87%にのぼりますので、ワクチンの利点や有用な情報を副作用のリスクなどとともに正確に保護者の方に伝え、自信を持ってワクチンの接種を勧めることが大切だとお話されていました。

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「ワクチンフォーラム2012」にて:ワクチンの同時接種の安全性、不活化ポリオワクチン、4価ワクチン、インフルエンザワクチンについて(その2)


9月5日のワクチンフォーラムでの崎山先生のお話の続きです。

今回は不活化ワクチン、4価ワクチン、そしてインフルエンザワクチンについてです。

 

今月の1日から全国で不活化ポリオワクチンの接種が開始されています。

今までのポリオ生ワクチンと違い、ワクチンによる麻痺がない安全性の高い注射するワクチンです。


もう既に接種された方も多いかと思いますが、今回の不活化ポリオワクチンはフランスから輸入されたワクチンですが、国内での治験後に使用されることになり、各地で多くのお子さんに接種されています。

未発表のデーターですが、今年の春の主要都市におけるポリオ生ワクチンの接種率は60%台に下がっていましたので、かなりたくさんのお子様がポリオに対しての免疫がない状態です。

ポリオの接種が済んでいないお子さんは早めに不活化ポリオワクチンを接種してくださいね。

 

そして、11月からは新しいワクチンが開始されます。

今までの三種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風)と不活化ポリオワクチンが合わさったワクチンで、計4種類のワクチンが入っている混合ワクチンのため4価ワクチンと呼ばれます。

このワクチンは現在のところ2社から発売される予定(クアトロバック、テトラバックという商品名です)で、どちらのワクチンも使用できます。

 


最後のインフルエンザワクチンについてのお話では、インフルエンザワクチンの有効性についてでした。

よくインフルエンザワクチンは効かないと言われているようですが、

崎山先生のお話ではその評価の仕方が誤っているものが多く正確に評価した研究を集めると実際にはワクチンの効果は60~70%程度はあるとのことです。


但し2歳以下でのインフルエンザワクチンの効果は少ないとのことで、この年齢層でのインフルエンザワクチンの接種に関しては、色々と相談の上でということになるかもしれません。


しかしどのワクチンでもそうですが、インフルエンザワクチンにも集団免疫効果というものが有り、

その集団(学校なり幼稚園や保育所、その地域など)でのワクチンの接種率がなり高いと、ワクチンを接種していない人にも病気にかかる率少なくなるという効果を及ぼしますので、はやりワクチン接種は大事だということになりますね。

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第22回日本外来小児科学会(in 横浜)に参加してきました・・・ワクチン、スキンケア、アレルギーなどの話題で活発な内容でした

 先週の金曜日・土曜日・日曜日にわたって、横浜で開催されました日本外来小児科学会に参加してきました。この学会は小児科のクリニックの医師が主体となり、患者さんへのより身近な、かかりつけ医としての、患者さんの側に立った医療を目指そうという、全国の熱意ある小児科医の集まりの、年に一度の全国的な学会です。そこで話題・議論が行われていることは、明日からすぐにでも、外来に受診して来ていただいているお子様に役立つような知識や治療を活用することを目的にしています。

今年も、当クリニックの看護師や事務員のスタッフも多数参加してきて、その話題や新しい医療知識なども学んできましたので、早速今日からにでも受診されている皆さんにお役に立てるようなお話を、これから何回かにわたってお話してゆきたいと思います。

お話の内容は、新しいワクチンの知識不活化ポリオワクチン、三種混合ワクチンと不活化ポリオワクチンが一緒になった4価ワクチン、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチン、B型肝炎ワクチン、麻疹風疹ワクチン、水ぼうそうワクチン、おたふくワクチンなどのいろいろなワクチンの効果やワクチン接種のスケジュールの立て方)、アトピーや食物アレルギーなどのアレルギーの病気の対処の仕方、アトピー性皮膚炎や治りづらい湿疹に対するスキンケアの仕方、などなど・・・・

これから、ホームページの院長ブログやスタッフブログで紹介させていただきますので、皆さん楽しみにしていてください!


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小児呼吸器疾患シンポジウムに参加して:3)青春小説!「もし、ドラ」をご存知ですか?

8月上旬の東京で開催されたシンポジウムでの特別講演で、ベストセラーにもなりました小説、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」(敏腕マネージャーと野球部の仲間たちがドラッカーを読んで甲子園を目指す青春小説!)という本の著者の、岩崎夏海先生の講演を聞いてきました。

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ちょうど時期的に夏の甲子園の予選、そしてこの時期は甲子園の本体会の時期ですが、高校野球の話ではありませんでした。

高校の野球部の生徒(マネージャー)がドラッカーという有名な経済学者の著書を読むという、一見なんのつながりもないような話なのですが、岩崎先生によるとそこが一番大事なところということでした。

"わかりきった答えが正しいことはほとんどない!"

"顧客(お客様、もしくはサービスを提供する相手、(または野球部の相手?))は誰なのか?顧客を明確にすることが大事!"

"多くの人たちが、サービスをする相手、もしくは目標とする対象となる顧客というものについて、誤った考え方を抱いている!"

そして、具体例として、経済不況下のGM社(アメリカの自動車会社)の立て直しや、カリフォルニアのガールスカウトの人種問題についての対応の例を挙げていました。

どちらも大多数の人が賛成する案の反対のことを行なって問題を解決させていったそうです。

小児科にとっての最終の目標とする集団は、お子さんから保護者、そしてそれを取り巻く周囲の社会全体でしょうか・・・・

最後に岩崎先生は、これからは権威に依存する時代ではなく、市民一人ひとりが周囲の人や社会に何が貢献できるか、何に責任を持つかを考えて行動するマネージメントの力が必要だと話されていました。(ドラッカーの著書に、「非営利組織の時代」という本があるそうで、参考に紹介されていましたね。社会の貢献度こそが大事で、それが通常の権威を超えるような時代になって来るだろうとのことです。)

仕事や職種は違いますが、大変参考になったお話でした(^O^)

 

 

小児呼吸器疾患シンポジウムに参加して:2)子どもさんの長引く咳について


シンポジウムの
2番目の演題は、東海大学医学部小児科の教授の望月博之先生のお話でした。内容は、子どもさんの長引く咳についてです。

長引く咳は俗に"慢性咳嗽"とも呼ばれ、しつこい咳のために病院を受診される方が時々見られますが、この際に気をつけなければならないことと、考えられる病気についてのお話でした。

 小児でも大人と同じように、慢性咳嗽についてのガイドラインがありますが、診察の際に特に注意しなければならないのは、どのような咳が(湿った咳か、乾いた咳か)、一日の中でどの時間帯に、いつくらいの期間が持続するのかという事を丹念に調べることです。

そして実際の診察の時には、胸の音を詳しく聴き、ぜーぜーなどの喘鳴が入らないかどうかの確認も必要になってきます。

頻度の多い病気としては、風邪、喘息、蓄膿症、胃食道逆流症、心因性、タバコなどですが、これらの病気の咳を見分けるために、"湘南カフカ"という、咳のときの周波数を検出する検査機器を開発されて、実際の病気のお子さんでどのように違うかを示されていました、それによりますと、心因性や喘息、風邪の咳などの見分けがある程度できるようです

それにより的確な治療法の選択ができますね。

たかが咳ですが、長引く咳や夜間の咳は、周囲の家族の方も辛いので、このような新しい知見が多く出てきて、早く実際の診療の場面で役立てることができるようになると良いですね。

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小児呼吸器疾患シンポジウムに参加して:1)軽症の小児喘息のマネージメントについて「Early Supporting Use 」  


 
先週末に東京で開催されました、小児呼吸器疾患シンポジウムに参加してきました。

一番目の演題は、東京慈恵会医科大学小児科の准教授の勝沼俊雄先生のお話でした。


2012080417440000.jpg 内容は、小児の軽症の気管支喘息についてです。

小児科の外来を受診される喘息の多くのお子さん(ほぼ三人に一人くらい)は、喘息の発作が季節的に発作を起こすか、もしくは月に一回程度の発作しか起こらない、いわゆる軽症のお子さんです。

発作の回数も少なく症状も軽いため、ついつい"そのうち大人になったら治るだろう"と思われがちですが、実はこのような軽い喘息のお子様でも7歳までに治らないと、40代の大人の時期までも半数くらいの方が喘息を引きずっていて、治りづらいことが多いと話されていました。


「軽症の喘息のお子様でも、しっかりと診断をして、状態を評価し、治療を含めてしっかりと経過を見てゆくことが大事!」 ということです。


また、喘息の子どもさんの多くは、風邪をひくと発作が起きて症状が悪化しやすいのですが、このような時に早めに気管支を広げる薬(気管支拡張薬)などを使用すると、症状の改善が早く、呼吸状態も早めに楽になるという全国の他施設の共同研究結果を報告されていました。


早めに治療して、早めに治す : Early Supporting Use を 提唱されていました。


日本外来小児科学会春季カンファランスに参加してきて(4)

春季カンファランスの午前中のセッションの、「診察室の外の子ども達」の3番目の招待講演では、「子どもたちの健康問題と学校保健の役割~Health Promoting School を目指して~」と題して、帝京短期大学教授の宍戸洲美先生が講演されました。

宍戸先生は、ご自身が、医療関係のお仕事から始まり、養護教諭を経験され、現在は短期大学で養護教諭を目指す学生さん方に教育をされているお立場から、「学齢期の子どもたちへの健康問題のとらえ方」、「学校保健への取り組み」、「健康教育の発想に基づいた学校保健活動について」などを講演していただきました。

学齢期のお子さんに対する健康問題は、20年くらい前までは保健室の役割が重要でしたが、最近は不登校、タバコ、性、ストレスなどの問題への対策のために「子どもたちへの健康教育」の機能が重要になってきているそうです。

子ども達の「健康に生きる力」を育てるためには、組織的に子どもを取り巻くより多くの人や関係機関とつながる必要性があり、その活動の核になる人が養護教諭の方々です。子ども達の心身のケアや健康教育、健康相談活動を行なって、子どもたちの健康づくりの計画や実践・評価をする事が、養護教諭の学校保健活動の実際だと話されました。

その内容は、まず子どもを丸ごと受け止め、1)子どもの健康実態を明らかにして、2)子ども自身に働きかけて、健康のケアと教育を合わせて集団的な力を組織して、3)教職員や保護者・地域の力をつなげて・広げて、学校教育を社会に働きかけます。目標は「子どもを健康の主体者に育てる」ことだそうです。多様な人や関係機関を巻き込んで組織的に健康教育を行うのが、養護教諭の学校づくりと話されていました。

 さらに、われわれ学校医の大きな仕事であります、子どもたちへの「健康診断」については、健康診断の主体は子どもたちなので、「受けさせられている健康診断」から、「受けてみたい健康診断」へ発展させるために、1)生活の仕方と健康診断をつなげる。2)子どもの要求で学習環境を見直す。3)健康診断と健康教育をつなげる。ことが重要で、そのために養護教諭と学校医が共に健康診断をする必要性を訴えていました。

 最後に、「子どもを取り巻く人と繋がる~学校保健委員会~」構想にも触れられ、子どもの実態からテーマを決めて協議し、組織ごとに具体的な計画を立てて取り組み、その成果と課題を確認することが重要とはなされていました。そのメンバーは、学校医・学校薬剤師・教職員・保護者代表・子ども代表・地域関係者(児童民生委員、青少年対策委員など)・地域関係機関(保健所、子育て支援センター、保育所、幼稚園、学校、教育委員会など)で、これらの関係各機関が協働して、共に活動してゆくことが大切と講演されました。




北海道保育園保育協議会理事会・総会より~保育園の感染症・予防接種について


昨日の日曜日に、札幌で開催されました北海道保育園保育協議会の理事会に出席してきました。

保育園児の健康管理、感染症対策、予防接種についての、報告並びに今年度の事業計画と、北海道内の保育園を対象に行われた予防接種推進に対するアンケート結果の報告がありました。

保育園保育協議会は全国的な組織で、北海道ブロックもその一つです。

保育園の保育士の方、園長先生、保育園医、幼児保育・教育の専門家などの人々が集まって、保育園児の健康を守るために、お互いに職種の垣根を越えて、情報交換や勉強会を開催して、より良い保育園児の生活を推進してゆく組織です。

今回も保育園における健康問題について、色々な方から意見が出され、これからの活動を確認しました。

最後に、感染症や予防接種に対してのアンケート結果が報告されました。

北海道全体の地域を対象とし、302か所の保育園から回答が寄せられました。目立つのは、保育園では「感染症の手引き2010」を知っている園が65%位あり、活用しているのは88%と高率でした。

しかし水ぼうそうやおたふくカゼ、溶連菌感染症、ウイルス胃腸炎などの感染症にかかった後の「登園許可証」の利用や休ませる期間の認識が十分でない地域もあり、保育園の保育士の方や保護者の方への、感染症の正しい知識とその活用については、出席者の各理事からも、まだまだ改善の余地が十分にあるとのコメントが多数寄せられ、旭川地区でも、保育園や保護者の方への感染症に対する認識をさらに一層進めなければならないと感じました。

 

 

会が終了後、少し寄り道をしてニトリ文化ホールに行き、山下達郎のコンサートを観てきました(*^_^*)

昔懐かしく、楽しんできました。  達郎のアカペラ最高っ!!\(^o^)/

還暦前なのにすごいパワーでしたね。

やはり、ライブはいつ観ても良いなぁ(*´∀`*)

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日本外来小児科学会春季カンファランスに参加してきて(3)


春季カンファランスの午前中の、「診察室の外の子ども達」の2番目の招待講演では、

「子どもの成長を支えるしなやかなネットワークづくりを目指して~学校を支援する各機関に求められていること~」と題して、横浜市教育委員会の主任指導主事の宮生和郎先生が講演されました。

宮生先生は、教育相談や不登校対策に関わられているお仕事を通して、学校生活や子育てに関して保護者や教職員からの相談が増加していること、そしてその解決のためには家庭だけ、学校だけの努力では限界があると話されました。このような状況では、子どもや、家庭や、学校に関わりのあるいろいろな機関(組織)がしなやかなネットワークを作り上げて、連携することが子どもの成長を支える原動力になると強調されていました。

統計からは、不登校やひきこもりは、社会の経済状況が悪化してきた平成8年頃から増加してきており、平成14年以降は横ばいの傾向です。また年齢別で見ると、「中学校1年生のギャップ」14歳の壁」と称されるように、この年齢の子ども達から急激に、不登校や引きこもりが増加しているようです。

この年齢は、内面の自分(自分を見つめ直して、自分をよく知ること)外向きの自分(家族や友達、先生などの周囲の人々に見せる(付き合う)自分)との間に大きなギャップが出来、そのバランスの悪さから、様々な葛藤を引き起こします。その解決のためには、この葛藤を通して自分自身が成長できるように、周囲の人々は、お子さん自身が自分から歩み始めることが出来るようなサポートをしてあげれらるように配慮し、「子どもたちに接する時には、共に遊び、共に考えるような、一体感がる有る成長過程への心理的援助」の必要性を話されていました。

また、「教育は学業だけではない。そしてお子さんには、何をしてあげるかではなく、一緒になって自己をどのように育てるか(育てることが出来るか)が教育の原点である。」と述べられていた言葉が、強く心に残りました。

日本外来小児科学会春季カンファランスに参加してきました(2)

カンファランスの午前中の、園・学校保健勉強会では「診察室の外の子ども達~学校の子ども達が抱かえる問題を考える~」をテーマに、3人の方の招待講演が行われました。


招待講演1では、「ある小学校長のつぶやき~小学校現場の教員、子ども、保護者の様子~」と題して、横浜の市立小学校校長の室井克之先生が、今、学校が置かれている現状について話され、疲弊している現場の状況を、校長会のアンケート結果を交えながら講演していただきました。

学習指導要領の改訂により、小学校では算数、国語、外国語などの13教科と、人権、健康、食、環境、安全などの10項目以上の教育的課題、更に学力向上、体力向上などの向上課題などを教える必要があり、その結果、先生も子ども達も、物理的な時間の余裕が無くなったり、放課後の学校の利用停止などにより、「遊べなくなくなった子ども達、遊ばなくなった子ども達」、「遊べなくなった先生、遊ばなくなった先生」が増加しており、それが最近の20年間で特に目立ってきているようでした。

そして、「事件は現場で起こっている。」という、その現場から、様々な問題点を解説していただいた上で、学校を取り巻く環境としての"特別支援教育"や、"幼稚園・保育所・小学校・中学校の連携"、"地域の評価"の現状と、社会の変化の中で、教員も、子どもも、保護者も、みんなが変わってきており、そのミスマッチによる問題点なども強調されていました。

校長先生による、学校の現場からのお話は、われわれ学校医をしている小児科医にとって、改めて現場を知る上で必要なことであり、明日からの学校医としての取り組みへの重要なお話でした。

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日本外来小児科学会春季カンファレンスに参加してきました(1)


今日外来は、今まで多かったインフルエンザの方がほとんど見かけなくなり、代わりに胃腸炎や溶連菌感染症の方が目立つようになってきました。


さて昨日は、横浜で開催された日本外来小児科学会の春季カンファレンスに、当院のスタッフ5名と一緒に参加してきました。

今回は園・学校保健勉強会の開催も一緒でした。


午前中の園・学校保健勉強会では、最初に東日本大震災の被災地である岩手県の、みうら小児科の三浦先生から、「グリーフケアキャンプに参加して~被災地の子どもたちとともに~」と題して、岩手県被災地の子供たちが元気になるよう、悲しみを乗り越える一助となるよう、諸団体と協働して行なった「野外体験活動」について報告して頂きました。

"グリーフケア"とは、大切な人を亡くし、大きな悲しみに襲われている人に対するサポートのことです。

震災のことを忘れ、「素晴らしい仲間」「生きる力」「希望」を実感できるよう、「笑顔で楽しい思い出」を得る場所と時間となるよう、活動されました。


その話の中で、被災地のお子さんは過度にはしゃいだり、人と接触したがるなど、年令に合わない行動が目立ったそうです。

やはり震災後の心の傷が残っており、その解決のために、「とにかく接する」、「一緒に遊ぶ」、「笑顔を絶やさずに接する」ことの重要性を話されていました。

多くの震災の写真とともに、それを乗り越えようとする子供たちと周囲の人々の暖かいサポートに胸が打たれました。

まだまだ震災は終わってはいないことを痛感しました。

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北海道の小児科の学会にて:溶連菌感染症の重症例について

昨日の日曜日(3月11日)に旭川で、北海道の小児科医の学会がありました。

感染症や、神経の病気成長の異常食物アレルギーの治療心臓の病気事故などの演題の発表がありましたが、目に付いたのが、重症の溶連菌感染症の演題でした。


溶連菌感染症は子供さんの、のどのばい菌による病気(細菌感染症と言われます)の中で一番多い病気で、小児科の外来の中でも、発熱やのどの痛みなどで受診される時にはポピュラーな病気ですが、この細菌による重症の病気の報告が相次ぎました。

一般的にはこの細菌の感染症にかかっても、発熱やのどの痛みなどで受診され、診断後抗生物質を使えば、2~3日くらいで症状も良くなり、決められた日数の抗生物質を飲めば、ほとんどの方が治る病気ですが、今回の報告では、この細菌が体内に入り、意識障害や血圧低下などのショック症状になって 集中治療 という治療のため長期の入院が必要になったり、腕や足が細菌で腫れて外科的な処置が必要になったり、骨にもばい菌が入り数週間の抗生剤の治療が必要な報告がありました。


また、注意しなければならない例として、3か月のお子さんの報告があり、家族の方がそのばい菌を持っていたため小さなお子さんにうつってしまった家族内感染の例もありましたので、お母さんやお父さんの症状にも注意しなければならないということを改めて強く感じました。


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インフルエンザとマイコプラズマ感染症のシンポジウムに参加してきて


先週の土曜日(1月7日)に、東京で開催されましたインフルエンザ感染症とマイコプラズマ感染症のシンポジウムに参加して来ました。

インフルエンザ感染症の講演では、インフルエンザワクチンの効能や効果、新しい治療薬を含めた治療戦略、などの話がありましたが、興味が惹かれたのは、徳島大学の先生が、飲みくすりや吸入のインフルエンザの治療薬を使用すると、未使用の方に比べて治癒後のインフルエンザウイルスに対する抗体の上がり方が少ないということでした。 

言い換えれば、早期の治療薬の使用でインフルエンザ感染症の症状は早めに良くなるものの、免疫は付きづらいとのことでした。


そのため、今後治療薬を使用してもさらにその後のインフルエンザウイルスに対する免疫もしっかり付くような治療戦略が必要であるというお話でした。


また、今後の治療薬として、インフルエンザウイルスのみならず、他の数種類の重篤なウイルス感染症に有効な開発中の新薬の話題もありましたが、これが使用出来るようになるとさらにウイルス感染症の明るい話題になると思われます。


マイコプラズマ感染症では、札幌の徳洲会病院の先生が、最近話題のマクロライド系の抗生剤に耐性(薬が効きづらい)のマイコプラズマ感染症について講演をされていました。

確かに最近になり、耐性のマイコプラズマ感染症が多くはなったものの、その増殖の力は弱く、耐性であってもマクロライド系というこれまでの薬を使用すると、マイコプラズマという細菌を殺す力は弱くても、この薬の炎症を抑える力により、肺炎やほかの症状を改善させることがよくあるので、マクロライド系の薬が耐性だからといって、改めて新薬などの他の薬を多く使うような状況にはしない方が良いだろうということでした。

 


第48回日本小児アレルギー学会より(その6)


前回のその5に引き続きまして、第2日目のシンポジウム9では3番目の講演として、日本医科大学の耳鼻科の先生が「アレルギー性鼻炎に対する免疫療法」という演題で講演されました。


耳鼻科では、アレルギー性鼻炎に対する最近の新しい治療法として、一つ目には皮下注射(注射の一種で、皮膚の比較的浅いところに行う注射、予防接種もこの皮下注射が多いです)によるアレルゲン免疫療法(アレルギーのもととなる物質を注射する治療法)が行われつつあるとのことでした。そしてこの治療法は成人よりも小児の方が有効性が高いとのことです。


二つ目の有効な最近の治療法としては、同じくアレルギーのもととなる物質を、これは皮下注射ではなく口の中の舌の裏側(舌下といいます)に直接垂らして、免疫力を高めアレルギー性鼻炎を治療しようという方法(舌下免疫療法)です。時に気管支喘息などが起こることがありますが、重症な副作用は稀とのことでした。

しかしこれらの治療法を行える医療機関は少なく、今現在どこでも出来るというわけではなく、今後の治療法といえそうです。


4番目の演題として、埼玉医科大学の皮膚科の先生が、「アトピー性皮膚炎の病態とスキンケア」という演題で講演されました。

アトピー性皮膚炎は、痒みを生じながら慢性に続く皮膚の病気で薬としての皮膚の炎症を抑える塗り薬と、皮膚のバリア機能の改善を目的としたスキンケアが重要とのお話です。赤ちゃんの頃から徐々に皮膚の水分を保つ能力は低下してゆき、アトピー性皮膚炎になると一層この能力が落ちるそうです。そのため保湿を中心としたスキンケアは、アトピー性皮膚炎の発症の予防につながることを力説されていました。


そして、保湿によりこの皮膚のバリア機能を良い状態に保つことで、皮膚から入る卵や牛乳、ダニなどのアレルギーの物質を少なくし、その後のアトピーを防ぎやすくするそうです。このことから、新生児期の赤ちゃんの時期よりスキンケアをすることが重要で、例えば、入浴直後にローションタイプの保湿剤を塗り、就眠前にクリームタイプの保湿剤を使用したり、外出時にはワセリンなどで肌を保護するなどの、保湿剤の使い分けの話もされていました。


第48回日本小児アレルギー学会より(その5)

前回と同じくシンポジウム9より、2番目の演題は、札幌医科大学内科の喘息の専門の先生が、「気管支喘息における末梢気道病変の病態と治療」と題した、成人における喘息についての講演でした。ただし成人の喘息のお話ですが、その成人喘息の原因はほとんどが小児喘息です。ですから小児喘息の治りが悪く、成人喘息に移行するお話とも言えます。


「末梢気道」とは肺の隅々にわたる細かい空気の通り道のことで、呼吸によって酸素を取り込んだりするのはこの部分がメインになってきます

そのため、この部分が喘息などで障害を受けると、呼吸が苦しくなるわけです。しかもこれよりノドに近いもっと太い部分が正常でも、この部分に異常がある場合には、なんと通常の聴診や診察では分からないことが多いそうです。この部分の異常を見分けるためには、精密な呼吸機能検査や息を吐き出した時の胸のCT検査などが必要で、その診断がなかなか難しいとの事でした。

そのため、一見して治ったかに見える喘息であっても(通常はこのパターンの方が多いのですが)、鼻風邪や鼻アレルギー、軽い咳だけの風邪などでも、それまで全然大丈夫で、本人自身も喘息など忘れてしまっているような状態でも喘息の症状が再発しやすいのだそうです。また、風邪もひいてない健康な状態でも、激しい運動などをすると息切れがするのもこの状態(末梢気道が正常ではなく、やや狭くなっていたり、一部潰れて機能していない状態)が考えられるとのことでした。


これらのことから言えるのは、小児の時に治ってしまった喘息でも、この末梢気道に異常が残っているような状態では、いわゆる喘息発作の火種が残っているような状態ですので、思春期や成人になってまた喘息が再発しやすいとのことでした。

このようなことから、成人の喘息のほとんどは、末梢気道が治っていない、一見治ってしまったかに見える小児喘息からの持ち上がりが考えられます。そのため、成人も含めた喘息治療は、いかに小児の時期の治療により、このような末梢の気道まで正常化させることが出来るかどうかと言えそうです。


重症の小児喘息の人では、7歳の頃までに治りが悪ければ、将来成人になった時の肺の閉塞性病変(喘息以外でも呼吸が苦しくなる病気があり、その一種です)になり易いとのことでした。7歳以降まで重症の喘息の状態が残るようであれば、そのうち大きくなれば治るなどとは言えず、その後の小学校から中学・高校ひいては成人に至るまでの呼吸機能の改善が悪いという結果だそうです。

そして、これらの問題を改善するためには、末梢の気道に合うような吸入ステロイド剤の選択・治療適応が必要であると述べていました。

第48回日本小児アレルギー学会より(その4)

 日本小児アレルギー学会第2日目の午後は、シンポジウム9「小児アレルギー医に必要な境界領域の知識 診療科を超えて小児アレルギー疾患を考えるー治療のステップアップを目指してー」を聴いて来ました。


1番目の演題は、国立相模原病院の先生による、「成人における食物アレルギーの実態」という話でした。

20歳以上の方の即時型(食べてから短い間に症状が出てくる)食物アレルギーの原因物質は、甲殻類(エビやカニなど)が18%、小麦が15%、果物類が13%、魚類が11%であり、鶏卵や牛乳が多い小児とは原因となる食物がかなり違うとのことでした。

特に、成人では食べるもの以外による(例えば花粉など)腸管外感作ルートでの食物アレルギー(pollen-food-allergy-syndrome)が代表的なもので、花粉症の発症年齢が低年齢化しているため、小児科でも今後気をつけなければならないということです。状況によっては、食べたことがない食物でもアレルギーが起こる可能性があり、例えばリンゴの口腔アレルギーの人が、初めて食べたびわや豆乳でもアレルギーが起こり得ることに注意する必要があるとのことでした。

また、女性では化粧品の中に入っている食物からの蛋白が、顔に化粧品を使用することによって顔からの皮膚経由の感作で食物アレルギーが起こることも多く、最近話題になりました「茶のしずく」による小麦の食物アレルギーが多発していると問題視していました。

このような病態は、成人において特徴的ですが、小児に生じても全く不思議ではなく、稀な食物アレルギーを引き起こす場合は、このような原因も考えなければならないようです。


そのほか、アニサキスアレルギー、納豆アレルギーなどの話題も出てきて、小児とは違う成人での食物アレルギーの特徴が勉強になったシンポジウムでした。

 他には、このシンポジウムでは、小児から成人の気管支喘息の話題や、アトピー性皮膚炎などの話題もありましたので、次回に触れたいと思います。

第48回日本小児アレルギー学会より(その3)


日本小児アレルギー学会第2日目の教育セミナー5では、「小児アトピー性皮膚炎に対するProactive Therapy の有用性―TARCを指標に加えた治療戦略―」と題して、東京の国立成育医療研究センターの先生の講演を聞いてきました。


小児のアトピー性皮膚炎は、その重症度の幅が広く、軽い人はスキンケアでコントロール出来るものの、重い人は成長や発達に障害を残すこともあり、その治療にはかなりしっかりと向き合わなければならないと話され、特に乳幼児で重症の方は、保護者の方が塗り薬のステロイド剤の使用をためらっているか、または使用していても適切な使用方法を知らない方が多いとのことでした。


そのため、成育医療センターではアトピー性皮膚炎の治療を行う上で、お子さんや保護者の方にステロイド剤を安心して使用できるようにまず始めに時間をかけて説明し、アトピー性皮膚炎に対する認識(原因や悪化因子など)をしっかり持ってもらい、さらに塗り薬のステロイド剤や皮膚の保湿を含めどのような治療法がそれぞれのアトピー性皮膚炎のお子さんに適切なのかという教育を十分に行います

そしてこのような説明に本人や保護者の方が理解を得た上で塗り薬のステロイド剤の使用を開始し、良くなるに従い順次保湿剤に置き換え、その後は無症状の状態を長期に維持するために、Proactive Therapy という、毎日ではなく、数日間に一回程度の頻度で時々塗り薬のステロイド剤を使用して、皮膚を良い状態に持続させる治療法を推奨していました。

第48回日本小児アレルギー学会より(その1)

先月末に福岡で開催されました、日本小児アレルギー学会の学術大会に出席してきました。


一日目の午前中では、教育講演5での「環境整備と薬物療法:どちらを重視していますか」という講演を興味深く聞くことが出来ました。


アレルギー疾患にとっていかに環境整備が重要か、特にダニ、ホコリに関しては殆どの患者さんでこれらが悪化因子になっているので、薬物療法に頼り切らずに、環境整備として室内のダニホコリの少ない環境をいかに維持させるか


またペットについてもそれがアレルギーの悪化因子となり、薬物でのコントロールが難しい場合は、適度の制限させる必要性があることなどが力説されていました。


さらに、家庭環境で問題になるのは、タバコの影響です。タバコはそれを吸っている人の健康の害だけではなく、同居されている家族・子供への影響が強く、喘息を持っているお子さんの家庭では、強く禁煙をすることを力説していました。


最近の傾向として、ロイコトリエン受容体拮抗薬、吸入ステロイド薬、長時間作動性の気管支拡張薬など薬物療法での有効性の高いものが、いろいろと小児にも使用されてきていますので、以前に比べて重症の喘息の患者さんが少なくなってきましたが、これらの薬物療法と並行して、さらながらアレルギーの悪化因子となっている環境におけるアレルゲンへの対策を怠らないことを、改めて認識させてもらえた教育講演でした。

第21回外来小児科学会に参加してきて(その3)

1日目の夜は、スタッフとともに、日本三大中華街の一つに数え上げられている、神戸の中華街に繰り出して、英気を養ってきました。帰りに立ち寄った中国の衣類や玩具などの小売店では、めいめいが気に入ったものやお土産などを購入し、明日の学会に備えるべく、 ホテルの帰路につきました。


さて、学会2日目の日曜日は、旭川へ帰る時間の都合もあり、午前中の参加だけでしたが、参加したワークショップである、23「小児気管支喘息について調査研究方法を検討する」では、題材に挙げられた小児気管支喘息の治療薬の研究論文を参加者全員で、吟味いたしました。

対象となる患者さんの選択は適切か?重症度が偏りすぎてはいないか?統計的に有効性は確かめられるものの、それが臨床的にどのくらいの意味合いを持つものなのか?


などの討論や、これらを踏まえた小児気管支喘息の診断や治療の方法などについても話し合いました。

また、「EBMを活用した論文の読み方」にも触れ、エビデンス(根拠となる論文)の探し方や、見つかったエビデンスを吟味する論文の読み方の講義も受けました。

 

最後に、小児の喘息やアレルギー、免疫に関する国際的な雑誌に、本学会員が投稿し、受理された論文にも触れました(「喘息既往のある幼児における、風車玩具を用いた聴診の用性」)。

これは、当院でも診察時に行っていますが、気管支喘息の患者さんの診察時に強制呼気(風車などの玩具で、思いっきり息を吹かせること)を行うと、喘息の診断率が上がり、隠れている(喘息と診断されず、単なる風邪と思われている)小児喘息の方への治療効果が上がるというものです。

実は、別に行われた内科の喘息の講演会でも、内科の喘息の専門家が、成人でも診察時にしっかりと息を吐かせることにより、長期にわたる咳の患者さんで、診断されていない喘息が見つかることが多い。と講演していたことと一致していますので、大人でも子供でも共通する診断手技が有用であった、興味深いワークショップでした。

 

参加したスタッフも、全国での小児科に携わる専門家の集まりでの、討論や情報交換、ワークショップなどに参加して、小児医療への意欲も一段と上がったようです。

来年は、横浜での開催になりますので、さらにやる気が出てくることでしょう・・・



第21回日本外来小児科学会に参加してきて(その2)

第21回日本外来小児科学会に参加してきて(その2)

 

1日目の午後の部門では、「何に気づき、どのように学ぶか」というシンポジウムを聞いてきました。


1番目の演題では、「総合小児科医を育てる」と題して、国立成育医療研究センター総合診療部の阪井医師から、人の能力は、一定の容積を持つものではなく、もっと柔軟性のあるもので、固定された観念を持つのではなく、様々の視点で見てゆくことが必要であること。

また、その人がどんな病気になっているのかということが重要ではなく、どんな人が病気になっているのかを考えることが重要であるということ。

そして生理学の重要性を話されていました。


2番目の演題では、「外来診療の質の向上のために」と題して、東京都の崎山小児科の崎山医師が、小児科医の小児科医による小児科医のための教育を、もっと充実させる必要があり、まれな疾患も適切に診断できる診療技術を持っているか?

日常的に行っている治療は本当に正しいのか?などについて、同僚評価する教育が求められていると講演され、まれではあるが、見逃してはいけない病気として、


し・・・・・・心筋炎、心筋症など

の・・・・・・脳炎、脳症など

あ・・・・・・アッペ(虫垂炎(俗にいう盲腸)

い・・・・・・イレウス(腸閉塞)

ず・・・・・・髄膜炎

に・・・・・・妊娠

がい・・・・・喉頭蓋炎(細菌性クループ)

とう・・・・・糖尿病

を指摘していました。


3番目の演題では、「小児科外来看護の気づきと工夫、そして発展のために」と題して、兵庫県のくまがいこどもクリニックの朝賀看護師が、診療の効率化と患者さんの満足のために何ができるかを小児科外来看護師の立場から考え実践してきたことを紹介されました。

具体的には、新人教育のマニュアル作成が新人看護師のためだけではなく、看護師全体の業務の統一が図られ、看護師間での意思疎通がスムーズになったこと。

看護師の視点にもとづいた病気やホームケアのリーフレットを作成し、保護者へのケアの説明時間の短縮と、看護の質の均一化が図られたことを話されていました。

 

この後は、慰労会として、神戸の中華街にスタッフ皆で繰り出して、翌日の英気を養ったことは言うまでもありませんが・・・・・(翌日のお話は、(その3)に続きます)

第21回日本外来小児科学会に参加してきて (その1)

8月27日・28日の両日、神戸で行われました、日本外来小児科学会に参加してきました。


全国から小児科関係の医師だけではなく、一緒に働いている、看護師さんや医療事務員さん、保育士さん、薬剤師さんなどが集まり、楽しくそして一所懸命勉強してきました。

当クリニックの看護師並びに事務員のスタッフも一緒に参加してきましたので、その成果はこれから順次、スタッフブログなどでお披露目して行きたいと思います。


私の方は、1日目の午前中は、「日常診療での臨床判断」というワークショップに参加してきました。

発熱のお子さんの事例を紹介し、その診断と治療について、20名前後の参加者がそれぞれの意見を述べ合い、明日からの日々の診療に役立てようというものです。

発熱の原因は何なのか?そのための診断手技はどうするか?診断後の治療薬はどうするか?今後の保護者の方へのアドバイスはどのようにしていったらよいか?などについて、熱く討論し合いました。

最近の新しいワクチンについてや、痙攣と抗ヒスタミン薬の使い方など、風邪薬の使い方などについても話題が広がり、約3時間弱の時間ではとても足りないくらいの内容でした。


お昼のランチョンセミナーは、その流れに乗って、「見直しませんか、いわゆる "かぜ薬"」を聞いてきました。
咳の出る成り立ちから、鼻水の薬の功罪、咳止めや痰切れの薬の使い方などについて、今までとは違った観点での講演内容で、とても興味深かったでした。


午後からのお話は、(その2)で、またご紹介いたしましょう。


乳幼児やおなかの赤ちゃんの受動喫煙について

先週の土曜日に、旭川医科大学小児科の同門会の講演会があり、以下の講演を聞いてきました。


演題:「家庭内喫煙による乳幼児の受動喫煙」

講師:札幌市保健福祉局保健所長 矢野 公一先生


内容は、妊娠中の喫煙が、いかにおなかの赤ちゃんに影響するか。また、家庭内の喫煙でお母さんやお父さんが喫煙していると、同居しているお子さんの受けるタバコの影響(たばこを吸っていない人にも影響を与える"受動喫煙"といいます)について、講演して頂きました。

妊娠中のお母さんがタバコを吸うと、ニコチンや一酸化炭素の影響でおなかの赤ちゃんに十分な栄養や酸素が届かなくなり、流産のリスクが高い人では2倍くらいになり、早産のリスクも高い人では6倍くらいになるそうです。また、1日10本以上喫煙するお母さんから生まれてくる赤ちゃんの体重は平均して450gくらい小さく生まれてきます。

また、出産後のお父さんやお母さんの喫煙は、あかちゃんの成長や健康に悪い影響があります。喫煙しているお母さんの母乳には、お母さんの血液中の約3倍に濃縮されたニコチンンが含まれています。お母さんが喫煙していなくても、お父さんや同居の家族の方が喫煙していると、お子さんの病気の発生率が高くなり、気管支喘息は約2倍、中耳炎は約1.5倍、肺炎・気管支炎も約2倍病気にかかりやすくなります。そして、ワクチン後の突然死で話題になりました、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生率は、両親とも喫煙している家族では約5倍も高くなるそうです。

平成23年の小児循環器学会学術集会に参加してきました

7月7日・8日の2日間、福岡で開催されました、第47回日本小児循環器学会学術集会に出席してきました。

今年の学術集会では、小児の心臓病の診断や治療に関してさらに新たな進歩が報告されていましたが、特に記憶に強く残ったのは、突然死のワークショップでした。

この突然死は幼児や学童などが対象でしたが、学校で行われている心電図検診の重要性や、それによって見つかる危険性の高い不整脈(WPW症候群やQT延長症候群など)の管理について討論されました。

また、その場合の対処の方法として、AEDの活用が挙げられています。
AEDは今や全国のほとんどの学校や公共機関に装備されていますが、遅れての対応では死亡率や後遺症の改善が悪く、救急隊の到着を待つ以前に、すぐ現場(学校や幼稚園・保育所など)での使用が求められています。
3分以内でAEDが開始された場合の助かる率は75%もありますが、実際にAEDが開始された時間は平均8分くらいとのことですので、これをいかに早くAEDを開始できるか、それが小児の突然死の救命率を上げる重要なポイントになるでしょうね。

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