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2012年6月 Archive

北海道アレルギー研究に参加して:食物アレルギーの経口免疫療法について


 

先週の土曜日(6月23日)に札幌で開催されました、「北海道アレルギー研究会」に参加してきました。

小児科に関連する内容は、食物アレルギーへの治療として、最近話題になっています、"アレルギーのある食物を食べて治す・・・経口免疫療法"です。

    KKR札幌医療センターの小児科の医師が発表されました。

これは過去のブログでも紹介いたしましたが、「"食物アレルギー"の原因となっている食物(例えば、タマゴや牛乳、コムギなど)を、アレルギーがあるからといって禁止するのではなく、むしろ医師の注意深い観察のもとで、ある程度食べさせながらアレルギー症状がどの程度起こるかを診てゆきながら、徐々に耐えられるくらいの原因食物の量を決定して、そのお子さんに今まで食べることが禁止されていた食物を、少量でも食べさせてあげることが出来るようにしてゆく。」という治療法です。

 現在までに、20名以上のお子さんにこの治療法を行なってきているとのことです。

その大きな目的は、

1)そのアレルギーの原因となっている食物を食べたいというお子さんの強い動機

2)たまたま間違ってその原因食物を食べてしまうと、予期せぬアナフィラキシーショック(時には生命を脅かすような強いアレルギー反応)を起こしてしまうのではないか・・・という強い不安の解除。 

とのことでした。

食べさせることによる強いアレルギー反応を未然に防ぐため、すぐに治療できるようにこの治療法は、小児科病棟に入院して行います。

約1週間から2週間かけて徐々に食べる量を増やしてゆき、保護者の方と相談しながら安全にある程度の量に達したら、通院に切り替えて自宅でアレルギーの原因となる食物を症状が出ない程度に食べ続けてゆくものです。

この治療法は、これからの食物アレルギーの治療法として有望視されていますが、ただ残念なことに、通院中にその食物を食べない期間が続くとまた症状が出てしまうことで、出来ればなるべく毎日でも食べ続けてゆくことが必要のようです。

 

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子宮頸がんワクチン(ガーダシルとサーバリックス)について

前回までのお話では、2種類の子宮頸がんワクチン(ガーダシルサーバリックスについてお話いたしましたが、最後にこのワクチンを接種するにあたって、保護者の方へご説明する時の重要なポイントを幾つか、以下にお示しいたしますので、どうぞ参考にして頂ければ幸いです。

 

1.     子宮頸がんワクチンの種類は2種類あり、それぞれ以下の利点がありますので、これを踏まえて、接種するワクチンを選択してください

A)   2価ワクチン(サーバリックス);子宮頸がんのガンなど複数のガンを予防する型が2種類ふくみます。子宮頸がんではこの2種類で70%を占めますが、残りの30%の人には効きません。

B)   4価ワクチン(ガーダシル)2価ワクチンの効果に加えて以下の病気に効果のあるウイルスの型が加わります。・・・尖圭コンジローマ(局所のイボ)と呼吸器のイボ(母子感染で子どもにうつります。稀な病気ですが命に関わることがあります。)

 

 

1)この2つのワクチンの値段は同じです。

2)効果は現在までは同じですが、サーバリックスの効果の持続が少し長いかもしれません。

3)数年後には「がん」に効く5種類が加わった9価ワクチンが発売される予定です

  このワクチンは、がんに対しては90%程度まで効果があります。

  性交渉を待てれば9価ワクチンの発売まで待つのも一つの選択肢です。ただし数年後先になる可能性もあります

  今回このガーダシルを接種して、さらに数年後に9価ワクチンを追加で接種出来れば、重なった型については、効果が高くなる可能性があります。

 

以上を踏まえまして、ワクチンの選択をしてみてください。


ただし何回も触れましたが、ワクチンだけではガンは完全には予防出来ませんので、「20歳になったら子宮がん検診」を受けることも大切です。


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子宮頸がんワクチン(ガーダシルとサーバリック)とB型肝炎ワクチンについて:2


子宮頸がんワクチンは、日本では現在2種類のワクチンが発売されています。

どちらも中学生から高校生の女子のお子様には、公費負担で無料で接種することができます。

またどちらのワクチンも複数回(3回ほど)の接種が必要で、その有効率は約7割くらいと言われています。


大きな違いは「サーバリック」はヒトパピローマウイルス(HPV)と言われる子宮頸がんを発症するウイルスに対する免疫が2種類(HPVの16型と18です)であるのに対し、「ガーダシル」の方は子の免疫をつける型が4種類HPV6型、11型、16型、18です)あるということです。

これによって、「サーバリックス」が子宮頸がんに対する免疫のみに対し、「ガーダシル」の方はHPVというウイルスの感染によって引き起こされる他の性感染症の尖圭コンジローマなどの病気の発症をある程度予防できるという違いがあります。

この病気は男性も発症しますし、このウイルスが赤ちゃんにもうつる母子感染症の原因にもなります。

ただしどちらも子宮頸がんに対する有効性は今のところ同じで、ほぼ100%程度と言われおり、世界中で100カ国以上の国で接種されています。

子宮頸がんワクチン(ガーダシルとサーバリックス)とB型肝炎ワクチンについて

現在子宮頸がんワクチン(商品名:ガーダシルとサーバリックス)が、中学校1年生から高校1年生の女子に対し、公費負担のため無料で接種できるようになっています。

今回は一昨日の旭川小児科医会の講演会から、この子宮頸がんワクチンについてのお話です。日本ではこのワクチンは、サーバリックスが2009年12月から、ガーダシルが2011年8月から接種が開始されています。このワクチンは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスの感染症に対するワクチンです。

それが何故子宮頸がんの発症予防にある程度効果があるかというと、「子宮頸がん」という女性特有のガンが実はウイルス感染による感染症の重い合併症だからです。子宮頸がんは日本では年間7000人の人が発症しているそうです。その原因がこのウイルスの感染によるためで、ワクチンを接種することによってこのウイルスに対する免疫をあらかじめ付けておくことにより、このガンの発症を減少させることが出来るというわけです。

しかしながら、子宮頸がんはこのワクチンだけで予防できるかと言いますと、その予防効果にも限りがあります。そしてこの病気はHPVというウイルスの感染による、性感染症です。ですからワクチンだけではなく、思春期のお子様に対する性感染症への健康教育と、ワクチンで防げない一部の子宮頸がんの早期発見のためのがん検診も重要になります。

次回は、この子宮頸がん予防に有効なワクチンが2種類ありますので、その点についても触れたいと思います。


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日曜日の救急当番医に受診された方も少なくなってきたようです

  • Posted by: tsuchida
  • 2012年6月12日 18:37

 6月10日の日曜日は、旭川市の日曜日救急当番医の指定病院でしたので、朝の9時から夜の6時まで、救急診療を行ないました。全体で受診された方は100名弱ぐらいでしたので、他の時期の 

通常の日曜日救急当番医の時の人数と比較すると少ない傾向にありました。
かなり胃腸炎や風邪などのはやっていた病気の流行がひと段落してきたようです。

これからは、咳や鼻水があまり無く、発熱が主体のいわゆる"夏カゼ"が流行ってくる時期です。
高熱やノドの痛みのため水分が摂れづらくなりますので、脱水症に気を付けてあげてください。脱水が疑われる時やその予防には、水分をいつも以上に摂るように心がけますが、水分なら何でも良いわけではありません。
湯冷ましや番茶よりは、「OS―1」などの経口補水液(点滴の成分に似た飲み水です。薬局などで販売しています)や赤ちゃん用のイオン飲料、あまり酸味の少ない滲みないジュースなどが最適です。
脱水が心配でたくさん飲ませた時もあるでしょうが、基本は少量を頻回にです。飲めそうでしたら10~20分毎に水分をとらせてあげても良いですよ。あまり水分が摂れなくて、おしっこの量が少なかったり元気がないようでしたら、発熱が無くても脱水が強いことがありますので、そのような時は病院を受診しましょう。

小惑星探査機「はやぶさ」の講演会を聴きに行きませんか?

  • Posted by: tsuchida
  • 2012年6月 7日 15:40
  • 講演会

皆さんは、小惑星探査機「はやぶさ」をご存知でしょうか?(*^_^*)


そう、あの映画にまでなった(「はやぶさ HAYABUSA」、「はやぶさ 遥かなる帰還」、「おかえり、はやぶさ」の3作が上映されましたね。)あの「はやぶさ」です。


今週の土曜日(6月9日)の午後1時半より、ホテル札幌文芸館(旧札幌厚生年金会館)において、「はやぶさ」を作り上げたJAXA宇宙航空研究機構の川口淳一郎教授が、「宇宙から未来の子どもたちへー小惑星探査機"はやぶさ"からの贈り物―」と題して、道民公開講座が開かれます参加費は無料です(^o^)

この公開講座は、「日本小児科医会」という全国の小児科の医師の団体による年一回の総会が札幌で開催されるのに合わせて、今回一般の方にも是非聴いていただこうと企画されました。

会長(北海道小児科医会会長:冨樫武弘先生)も、「これからの未来ある、小学生をはじめとして、中学生、高校生、大学生、そしてそのご家族の方にも、色々な感動や未来への夢や希望を与えられるような講演ですので、是非多くの方に(特に子どもや若い人達に)聞いてもらいたいのです。」と熱く語られていました。


札幌は、ちょうど「よさこいソーラン」で賑わっている頃ですが、あ祭りと共に、皆さんでご家族も一緒に、未来へのお話を聞きに行ってみてください(^^♪


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北海道ではHibと肺炎球菌による髄膜炎が減少してきました

先週の水曜日に、札幌で北海道小児科医会理事会が開催され、出席してきましたが、その中でトピックスとして、北海道では最近インフルエンザb型菌(ヒブHib)と肺炎球菌による細菌性髄膜炎の発症が減少してきているとの報告がありました。やはりここ2~3年前から多くのお子様がヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種されるようになり、その効果が現れ始めてきていると強く感じました。

北海道では毎年20人近くのお子様が細菌性髄膜炎という重症の病気にかかり、何人ものお子様が亡くなったり、重い後遺症を残す事態が続いていました。そしてこの髄膜炎という重い病気の原因の殆どが、ヒブや肺炎球菌が体内に入りこむことによって起こります。

このため、赤ちゃんの早い時期からヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種して、このバイ菌に対する免疫を付けておくと、このような病気にかかることが殆ど無くなってきます。すでに10年以上も前からこのワクチンを接種している世界中の多くの国では、この髄膜炎には殆どかからなくなり、死亡するお子様も稀になってきています。日本もやっとこのような状態に改善されてきているという訳です。

その時の報告では、インフルエンザb型菌(ヒブ)による細菌性髄膜炎は昨年の10月から、肺炎球菌による髄膜炎が同じく昨年の8月頃から、北海道での発症がゼロのまま続いているとのことでした。この報告はお子様や保護者の方にとってだけではなく、細菌性髄膜炎という重い病気で、さんざん苦しめられた私たち小児科医にとっても朗報で、大きな喜びです。

そして、この病気だけではなく、他にもワクチン防げる病気が数多くありますので、もっともっと多くのお子様が種々のワクチンを接種して、ワクチンで防げる病気を少なくさせることが必要だと思います。


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ロタウイルス胃腸炎のワクチンのシンポジウムにて(2)

前回に引き続いて、ロタウイルス胃腸炎予防のワクチンについてのシンポジウムのお話です。

このワクチンの一つは既に昨年の秋に発売されています(商品名:ロタリックス)。このワクチンにつきましては、既にこのブログでも去年に何回かお話していますが、生後6週(生後1か月半)以後からワクチンを接種することが出来ますので、日本で接種できるワクチンの中では一番早く接種できるワクチンです。1回の接種では不完全ですので、4週間の間隔をあけて合計2回接種します。

今年の夏か秋ころにはこのワクチンとは別のもう一つのワクチンが発売される予定です(商品名:ロタテック)。こちらのワクチンも生後6週以後より接種が開始できますが、接種回数は3になっています。


どちらのワクチンも効果はほぼ同じのようです。新しく発売されるワクチンにつきましても、重症の胃腸炎に対する予防効果は、1回目の接種で75%、2回目の接種で79%、3回目の接種では100%近いお子さんに予防効果が認められました。

さらにこのワクチンが広く接種開始されたことにより、思わぬ効果が認められたそうです。その効果というのは、実際にワクチンを接種するのは6か月未満の小さなお子さんですが、そのお子さんがワクチンでロタウイルスに対する免疫がつくと、ほかの年齢層(2~6才の年長児や6~12才の学童など)においても、ロタウイルス胃腸炎の流行がかなり少なくなったそうです。

乳幼児以外でも「ワクチンによる集団免疫効果」が認められたということですね。

もうすでにこのワクチンを幅広く接種しているアメリカなどでは、全年齢層でのロタウイルス胃腸炎の流行が減少しているという報告がありますので、そのうちロタ胃腸炎の流行も昔話になるかもしれませんね。



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