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2012年10月 Archive

前回のインフルエンザの治療についての続きです

前回はインフルエンザの治療について、その効果とタイミングについてお話いたしましたが、今回はその治療薬の内容(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタなど)についても簡単に触れておきましょう。

 最近ではタミフル(インフルエンザの飲むお薬、粉薬とカプセルがあります)に対して耐性の(タミフルが効きづらい)インフルエンザが多くなってきています。そのため各種インフルエンザの治療薬でも効果に差が出てきているようです。またインフルエンザのタイプの違いでも治療効果に差があります。

 例えば、インフルエンザB型はA型に比べて薬の効果が弱いと報告されています。インフルエンザB型にかかると、タミフルのような飲み薬やリレンザ、イナビルのような吸入の薬(口から吸うお薬)では効果があまり期待できないこともあります。ただしラピアクタという点滴のお薬はB型には他のお薬に比べて効果が高いということですので、小さな赤ちゃんや重症であまり口から水分や食べ物が摂れないお子さんについてはこの薬を使うメリットがあるようです。

 またインフルエンザA型ではタミフルの効かないタイプも多く、この場合はリレンザやイナビルという吸入のお薬も有効ですが、タミフル耐性でないタイプはやはりこの吸入のお薬よりもタミフルの方が効きが良い、という風にインフルエンザのお薬も色々な使い方がありますので、主治医の先生とよく相談されながらお子さんの治療にかかわってあげてください。
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インフルエンザの治療について

先週の菅谷先生「インフルエンザの治療と予防」講演会の続きです。


今回はインフルエンザの治療薬についてのお話です。

現在インフルエンザの治療に使われているお薬タミフル、リレンザ、イナビル、ラニラピッドなど)の最近の報告では、

やはり早期(かかってから2日以内)に治療すると、肺炎の発症率が8割以上低下したり、妊婦さんの入院率が5分の1位に低下するそうです。


外国ではこのような薬を早期に使われることが少なく、その結果かつての新型インフルエンザの流行では、アメリカなどでもインフルエンザの流行で日本とは比べ物にならないくらいに死亡する方が多く、1つの州で年間数十人が亡くなったり、イギリスでもインフルエンザによる死亡が日本の5倍くらいに多かったようです

(ちなみにイギリスでは、日本で使用されているタミフルなどのインフルエンザに効くお薬で早期に治療する方は1割以下で、多くの方がインフルエンザにかかると自宅待機を余儀なくされるとのことです!)


して日本では大学病院(慶応)の報告では早期(2日以内)にタミフルなどのお薬で治療される方は8割以上にものぼり、この差が死亡数の違いに出てきているようです。

 このような結果から、WHOなどの機関も、新型インフルエンザの流行において日本では諸外国に比べて驚くほど亡くなった方が少ない理由として、

日本での発症早期の医療機関へのアクセスの便利さ(かかってもすぐに医療機関に受診しやすい)と、発症早期(2日以内)のタミフルなどのインフルエンザのお薬の使用をあげており、ほかの先進国も今後日本の治療に見習う動きが出てきているとのことでした。

 

あまり発症早期の6~12時間以内の受診ではインフルエンザの診断率も低いのですが、48時間以内の投与では効果が有りますので、

インフルエンザの流行時期などでは、適切な時間帯の受診と診断が必要ですね。


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今年のインフルエンザワクチンは、大事です!


昨日、旭川で講演会がありました。インフルエンザの専門家で有名な菅谷憲夫先生の講演で、「インフルエンザの予防と治療」と題して、インフルエンザワクチンの重要性と治療について話して頂きました。特にこれから接種する今年のインフルエンザワクチンは、是非接種して下さいとの内容でした。

 つい最近になって、WHO(世界保健機構という国連の組織です)が、昨年のワクチンがあまり有効でなかったことを発表したそうです。その理由は、昨年流行ったインフルエンザA型の株が変異した(インフルエンザウイルスの型が少し変わった)ためだそうです。そのため、ワクチンの株が合わなくて効果が少なく(例年に比べて40%以上も効果が低かったようです)、しかも普通ならあまりかからない免疫のある成人などでも昨年はこの変異したインフルエンザウイルスにかかる人が多くなり大流行につながったようです。

 この教訓を生かして、今年のインフルエンザワクチンの株(型)は、昨年流行したこの変異した株を使っています。そのため今年もこの変異したインフルエンザが流行る可能性が高いため、その予防のためにはぜひとも今回の新しい株のインフルエンザワクチンを接種して下さいとのことでした。この抗原変異があるために、過去にインフルエンザワクチンを接種してる人も、今回流行したインフルエンザに対しての免疫が低いため、幼児から成人・老人を問わず、国民全員の方に今年度のインフルエンザワクチンを接種してもらいたいくらいこの抗原変異に対しての予防が必要であることを力説されていました。

 昨年からインフルエンザワクチンの接種量が変更され、小さなお子様でも0.25mlという量で成人の半分くらいの量を接種することになりましたので、効果も高くなることが予想されます。インフルエンザワクチンの接種は年内に済ませておくようにしましょう。

 次回は、インフルエンザに対しての最近の治療についてお話いたします。


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小児の牛乳アレルギー・・・・便秘、腹痛、嘔吐などの小児の消化管の機能障害との関係


先週の土曜日(10月13日)に札幌で、講演会がありました。話題はお子さんのおなかの病気(便秘、腹痛、下痢、お腹の張り)と牛乳アレルギーとの関係についてです。演者は大阪の母子保健総合医療センターの位田先生でした。

 お子さんの中で、6か月以上お腹の痛みや、便秘、下知、吐き気が続くときに「機能性腸疾患」という考え方で病気を診てゆくそうです。そしてこの病気や症状を示すお子さんの中で、ある割合で牛乳アレルギーのお子さんが見つかり、その治療で症状が改善することがあるとのことでした。

 欧米ではミルクアレルギーの診断として、嘔吐と血便をポイントにして、この場合血液検査でIgEという検査が陽性であれば、ミルクアレルギーの可能性が高いらしいです。

 大阪の病院では、重度のお腹の張りで受診される方のうち、ミルクに反応する検査結果などから、約半分以上の方にミルクアレルギーが疑われるそうです。また便秘の重症のお子さんでも、同じような検査で6割くらいが陽性に出て、ミルクアレルギーとの関係が疑われるようです。

 小さなお子様で、お腹の症状で受診される方の中にはこのミルクアレルギーを考えなければならない方もいらっしゃるのではないかなという印象でした。

 最後に大阪母子保健総合医療センターでの、職場環境の改善のお話をされていました。母子保健という施設の特徴から、職員としてそして母親として働く方も多く、その仕事へのサポートとして、早くから育児への勤務時間の時短(勤務時間の短縮)や、センター内での職員が利用しやすいような保育施設の充実を進めており、この職場環境の改善が結果母親として働く方以外にも好影響を与えて、職員全体の仕事への環境改善をもたらしたとのことでした。

日本小児アレルギー学会より:小児喘息の診断と治療のあれこれ(学童・生徒編)

今回の学会での小児喘息の話題を、少し上げてみることに致しましょう。


年長児(学童・生徒)での気管支喘息の長期管理では、運動をするかしないかによって、喘息の治療経過が変わるようです。

男子では運動することが多くその結果薬の変更や治療の追加が多くなるようです。

しかし運動をする機会が多いお子さんほどより細やかに治療を見直して継続ゆくので、その結果治療効果が高いそうです。

運動誘発性喘息はなかなか理解されづらいものですが、運動クラブでの喘息の状態を見極めることが必要ですね。

 

また長期間にわたり喘息の治療を続けてゆくお子さんの中では、思春期まで喘息の治療を続けなければならないお子さんでは自立できていない傾向もあり、

思春期からは本人がしっかりと自分の喘息の状態を理解して説明できるように促す必要があるとのことでした。 

 

最近では喘息のお子さんにも吸入の薬を使用することが多くなりましたが、

その中でもステロイドと気管支拡張剤が2種類含まれた合剤と呼ばれる吸入薬の使用で、肺機能の改善もよく、運動誘発性喘息にも効果が高いとのことです。


オリンピック選手の約1割は喘息を持っている方ですが、のようなお薬を使用することにより、喘息のお子さんでも世界的なアスリートも夢ではないですね。


しかしながらこのような有効で便利な吸入薬も、吸入の仕方次第で効果がかなり違ってくるデーターが多く報告されています。

場合によってはうまくできる人と吸入が下手な人では効果は2~3倍も違うこともあります。

もしお子さんが喘息の吸入薬を使用していらっしゃったら、今一度しっかりとした吸入の仕方が出来ているか、主治医の先生に診てもらうとよいでしょうね。


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皮膚の湿疹やかぶれからアレルギーの原因物質が入る(経「湿疹感作」)のが、アレルギーマーチである:日本小児アレルギー学会より

小児のアレルギーでは、アレルギーマーチという考え方があります。

生まれて間もない時期は湿疹やアトピー性皮膚炎で始まり大きくなるに従い小児ぜんそくやアレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎が発症してくるというものです。

 

最近の研究では、赤ちゃんの時期に口から入る食物ではアレルギーになりづらくし

その一方皮膚の湿疹やかぶれなどの病変のある部位から食物やダニなど、アレルギーの原因となりうる色々な物質が皮膚の湿疹の部位を通して体の中に入り

アレルギーになりやすい状態を引き起こすようです。


日本の研究でも、乳幼児期の湿疹が強いと、その後に食物アレルギーになりやすいという報告が出ています。

そしてこのような湿疹は単なる脂漏性湿疹(生後1か月前後のかさぶたのできやすい湿疹)やおむつかぶれではなく、いわゆる乳児湿疹がその後のアトピー性皮膚炎風邪をひいたときなどのゼーゼーのリスクになるとのことです。


 つまり、赤ちゃんの皮膚が口の周りも含めて正常でつるつるの皮膚であればアレルギーにないにくいのですが、

一方口の周りや体に湿疹があって、がさがさやジクジクの皮膚の状態であれば、そこから母乳や食物やダニなどの抗原(アレルギーを引き起こす物質)が入り込み、将来アレルギーになりやすくなることが強いといえそうです。

お子さんのアレルギーが気になる方は、生後早い時期から赤やんの皮膚は口の周りも含めてつるつるの良い状態にしてあげてくださいね。


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小児アレルギーのトータルマネージメント

  先月の小児アレルギー学会のランチョンセミナーでは、「小児アレルギーのトータルマネージメント」と題して、子どもさんのアレルギーという病気を、「患者さんの視点に立った医療」を目指して、いろいろなアレルギーのある一人の患者さんを、トータルにアレルギーの病気をコントロールしてゆこうというお話です。


 アレルギーという病気は身体のどこにでも発症します。それが皮膚であれば湿疹が出て蕁麻疹アトピー性皮膚炎になったり、であれば鼻水やくしゃみ・鼻づまりでアレルギー性鼻炎アレルギー性の蓄膿症になり、に発症すれば目のかゆみや涙目でアレルギー性結膜炎となります。そして気管支であれば咳やぜーぜー、呼吸困難で気管支ぜんそくなどになります。このようにアレルギーの病気は身体のいろいろな部位で発症しますので、一つの専門科だけではうまく治療がゆかず、小児科(大人であれば内科)、皮膚科、耳鼻科、眼科などのいろいろな科の専門医が密接に連携して、一人の患者さんを治してゆくことも多くあります。これが「小児アレルギーのトータルマネージメント」というわけです。


 具体的に一例を挙げれば、たとえばアトピー性皮膚炎は皮膚の病気ですが、眼科との連携が必要な時があります。アトピー性皮膚炎の症状のひどい患者さんでは、特に顔や目の周りの症状がひどければ、無意識に顔をひっかいたり、かゆみが強くて目の周りなどをたたく仕草をすることがよくあります。これが何回も何回も強くたたくことがあると、ひどい時には白内障や網膜剥離という重大な目の病気を引き起こすことがあります。昔はこの白内障なども、ステロイドの薬を使いすぎるからだという間違った認識をされる方もいらっしゃいましたが、むしろあまり薬を使わないで皮膚の症状がひどいときにこのような目の症状が起きやすくなります。そのため顔の、特に目の周りのひどいアトピー性皮膚炎では、眼科の先生との連携が必要になってきます。また子どもさんでアレルギー性鼻炎と気管支ぜんそくの両方の病気を持つ方も多いので、小児科医と耳鼻科医の連携が必要になります。咳をした時なども、その咳の原因が鼻水からなのか、胸の気管支の音が悪くて気管支からの咳なのかを見極めることも必要になります。

 お子さんもお母さん方も、アレルギーの病気が疑われるときには、このような複数の科で診てもらう必要が時にはあることも良く覚えておかれるとよいでしょうね。

 

食物アレルギーのシンポジウムに参加して

 

 先月の中旬に大阪で開催されました、日本小児アレルギー学会に参加してきました。一日目の午前は、食物アレルギーについてのシンポジウムでした。

 最初の講演は食物アレルゲンについてのお話でした。アレルギー物質を含む食物についての表示のお話では、厚生労働省では卵、牛乳、小麦、そば、落花生、えび、かにの7種目についてはすべての流通段階で表示を義務付けており、さらに大豆、牛肉、豚肉、もも、などの18品目についても表示を推奨しており、食物アレルギーを疑われる方はこの表示に気を付けて見て頂くことが必要です。また食べるものだけではなく、最近では化粧品の中に含まれている微量の小麦による石鹸アレルギー(茶のしずく事件)の報告もされていました。

 2番目の講演は食物アレルギーの診断についてでした。「食物アレルギーの診断の手引き2011」という冊子の内容に準じて行っているようです。

まず、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎に関しては、その原因が何であるかを詳しく聞き出すことから始まり、すぐ食物を除去することはせず、まず丁寧なスキンケアと適切なレベルのステロイドの塗薬から始めるとのことでした。そして1~2週間くらいでも治らないケースでは、血液検査などをして原因の食物を調べてゆくとのことです。

次に、食物を食べてすぐに(ほぼ2時間以内)蕁麻疹や、かゆみ、不機嫌、嘔吐などがあるような場合には、まず原因と考えられる食物の検査(血液検査など)をして、かなり確実な場合はその食物の摂取をやめることもありますが、やや疑わしいケースなどでは負荷試験(医師の観察のもとで、少量から食べ始めて症状を確認する検査)診断を確定することもあります。

 3番目の講演は離乳食の進め方と除去の解除の進め方についてでした。離乳食の開始時期は世界的に見て、4か月以降、6か月以内で始めているようですが、従来ではアレルギーの原因となるような食物については開始を遅らせていましたが、最近ではそのような証拠がないため、通常通りに開始することになってきているようです。解除の方法については、症状が人によって違いますので、基本的にはより少量で重い症状が出る人は、より慎重に原因となる食物を開始・増量すべきと言っています。

 

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